夏目アラタの結婚 1巻【あらすじ・感想】ただ気持ち悪いだけのサイコサスペンスじゃない

乃木坂太郎
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夏目アラタの結婚 / 乃木坂太郎

なかなかセンセーションな内容の作品ですが、絵が綺麗だなと思ったら「幽麗塔」の作者の方でした
他にも「医龍」「第3のギデオン」など、印象的な作品を描かれています

今回の作品も、『夏目アラタの結婚』というほのぼのなタイトルとは裏腹に、内容は見事にそれを裏切っていきます

何せ冒頭は、東京拘置所前の場面から始まりますので…( ´ᗜˋ;)

あらすじ(※ネタバレあり)

小菅 ― 東京拘置所前

一枚の紙を持って、
――今、俺 夏目アラタは、
3人…いや 恐らくは4人を、バラバラにして殺した怪物に会おうとしている…!

 

―3か月前

短気で無鉄砲な児童相談所職員の夏目アラタ

彼はある日、同僚の桃と一緒に、不登校気味の山下卓斗の家を訪ねることになる

実は卓斗の父親はバラバラ殺人事件の被害者であり、桃が言うには、卓斗はアラタに「ぜひ、謝りたいことと、頼みたいことがある」らしい

山下家で重い空気の中、テーブルを挟んでアラタと向かい合って座っていた卓斗は口を開く

父親を殺した犯人は見つかったけど、遺体の一部である首がまだ見つからない
犯人はなぜか遺体の隠し場所について口を割らない
だから自分が聞き出してやろうと思った、と

アラタ 「でもさあ、俺の名前で犯人と文通を始めるのはナシでしょ?」

それに対して「遺族だから実名はヤバいと思って、」と答える卓斗
そして「本当に返事が来るとは思わなかった」と

卓斗 「最後に来た手紙に一言書いてあった」

 

今度、直接会って話そうよ…

 

母親は卓斗を叱責するが、しかし卓斗は期待に満ちた目でアラタを見つめる

アラタ 「―で、頼みってのは?代わりに俺に会ってこいって…?」

アラタは卓斗に犯人からの手紙を見せてくれと言い、リボンで綺麗に束ねて保管されている手紙の束を手にしてしばらく考え込むが、気乗りしないながらも代理人を引き受けることにする

 

山下家を出た後、桃は被害者家族の少年の気持ちに応えてあげたアラタの行動を賞賛する

しかしアラタはそれに対して、そういうつもりじゃない、と答える

アラタ 「…あのガキ、文通を、面白がり始めてました」

手紙を綺麗にコレクションして、まるで有名な殺人鬼のSSRカードのようだ、止めなければ、と

桃はそれに対して、なんといっても相手があの「品川ピエロ」だから、少し分かる気がする、と答える

 

品川ピエロ―

2年前に発覚した、都内で発生していた連続バラバラ事件の、その犯人である品川真珠(20)

現行犯逮捕された際にピエロの扮装をしていたことと、一審の際の法廷画に描かれた歯並びの悪い口元が、人々の印象に残った

 

後日、スーツに身を包み東京拘置所を訪ねるアラタ

犯人にあまり学歴が無いらしいということから、自分はエリート公務員だという設定の戦略を立てて、相手に臨むことにしたのだ

待合所で番号を呼ばれて面会室に向かい、身構えて待っているとやがてドアが開き、そこに現れたのは―

細身な体系の、少女―…にも見える女性だった

アラタはたじろぎ、どう話そうかと焦りながら口を開く

 

アラタ「はじめま「夏目アラタ。」

 

真珠 「中学生みたいな字書く人だよね?」

品川真珠はアラタをじっと見つめるが、しかし、「思ってたのと、違う。」と言うと席を立ち、早々に面会室から出て行こうとする

(バレたか?)(どうやって引き止める)と焦ったアラタは勝負に出る

 

アラタ 「品川真珠~~!!」「俺と、結婚しよーぜ!!」

 

「結…婚…?」と聞き返す真珠に、アラタは「そう!このガラスを突き破って側に行きたいぜ!!」と熱演を続ける

それに対して真珠は薄っすらと微笑み、「ガキっぽいね、アラタは」と、椅子に座り直す

真珠は、最初はアラタがあのガキっぽい手紙を書いた本人じゃないと思った、と言う

アラタは自分は昔チョイ悪だった、ただの公務員だと答えるが、しかし真珠は「公務員なら、こんにちは、の「は」を「わ」で書いちゃダメでしょ?」と、言葉を返す

疑われていると焦ったアラタは曖昧に返答するが、真珠はその後も探りを入れた会話を繰り出してくる

アラタはそんな真珠の様子に(妙だぜ…。)と違和感を覚える

週刊誌の記事では、真珠は学校の勉強についていけない落ちこぼれのいじめられっ子だったはず、なのにこいつは頭が切れすぎると

アラタは真珠に向き合い、俺はウソをつくのが何より苦手だ、真珠の手紙からは安心できる匂いがした、俺の恋は今日会うずっと前に始まっていた、と口説き文句を並べる

 

真珠 「ボクが、怖くないの?」

アラタ 「怖くない(怖えよ!)」

真珠 「もし、万一ボクが、外に出てきたら、一緒に暮らせる?」

アラタ 「もちろん!(出てこれるわけねーだろ、おめーは死刑だ!!)」

 

真珠「―じゃあ、出るね。」

 

……

 

感想(※ネタバレあり)

被害者の息子に頼まれたという経緯で、品川真珠に近づいていくアラタ

しかし真珠の予測不能な言動やキャラクターに翻弄されて、なかなか本来の目的を達成できそうにありません

お互いの手の内を探り合う応酬を繰り広げていくのですが、しかしいざアラタが手を引こうとすると、なぜか今度は真珠がアラタを繋ぎとめようとしてきます

一体なぜ、真珠はアラタに執着し始めたのか…?

そもそもなぜ、真珠はあのようなずさんな犯行に及んだのか?

事件が発覚したのは異臭が原因で警察に踏み込まれたからなのですが、頭の切れる真珠がそのような雑な行動を取るのには違和感があります
ピエロの扮装という、猟奇じみたことまでして…

やっぱりただのサイコパスなのか??

弁護士の宮前はすっかり丸め込まれて、真珠が無実だと信じ切っているようですが…

でも作品を読んでいると、時折真珠が見せる哀しげな表情に「やっぱりこの子本当はいい子なんじゃ…?」と思ってしまうんですよね、宮前のことを笑えない(´°∀°`;)

と思いきや、次の瞬間にはまた薄気味の悪い表情を浮かべているので、「やっぱりこいつはただのサイコパスだ!!」と思考があっちこっちに揺さぶられます

真珠は何を考えているのか、本当に全く読めないです
あまりに印象の一致しない彼女に、過去の真珠と現在の真珠は同一人物なのか?という疑問をアラタが抱くほどです

 

…正直この作品、先が気になって仕方ありません

サイコパスな人間がただ人を殺していくだけの漫画は苦手なのですが、こちらの作品はキャラクターにもしっかりと色付けがされていて、ちゃんとストーリーとして楽しめます

ただ作者の描写力が有るだけに、真珠のリアルなサイコ顔は怖いですが(笑)
でもたぶん『ブルータル 殺人警察官の告白』とかが読める人なら、十分に許容範囲だと思いますよ!

ぜひ読んでみてください(`・ω・´)ノ☆

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